狂犬病ワクチンを獣医師会に所属しない獣医師が格安で実施していることに対して獣医師会が反発していると朝日新聞が報じた。いったい何が起きてるのだろうか。
犬を飼ってる人なら当然知っているだろうが、飼い犬は狂犬病予防注射が毎年1回義務付けられている。ペットの犬の頭数は何百万頭もいる。それが毎年予防注射するとなると、大きなお金が動いていることは想像できる。
厚生労働省の「犬の登録頭数と予防注射頭数等の年次別推移(昭和35年~平成27年度)」によれば、昭和35年(1960)の登録頭数は190万5,080頭、予防注射頭数が307万5,417頭であった。まだ登録されている犬は少なかった。平成21年度(2009)が登録頭数のピークで688万844頭、予防注射頭数511万2,401頭となった。その後は減少を続けており、直近の平成27年度(2015)には登録頭数652万6,897頭、予防注射頭数468万8,240頭であった。
年間470万頭もの犬が予防注射をされている。一方で狂犬病の発生状況はどうなっているかというと、厚生労働省の感染症情報の狂犬病に記載されている。我国における狂犬病の発生状況は、2006年に発病し2人が死んでいる。しかし、これはフィリピンを旅行中、犬に咬まれ帰国後発病、死亡した輸入症例で国内で発生したものではない。同じことが1970年にもネパールを旅行中、犬に咬まれ帰国後発病、死亡した輸入症例がある。1人が死亡している。国内で発生した最後の事例が1956年である。この時は犬6頭が発生して、1人が亡くなっている。つまり国内では50年以上狂犬病が発生していないのである。絶滅した病気だとも言われている。しかし予防注射は毎年実施されていて、それが獣医師の間で争いになるとは。
弊社がある練馬区では毎年4月に狂犬病予防集合注射が実施されている。費用は以下の通りである。
費用:狂犬病予防注射…3,650円(注射料金3,100円、注射済票交付手数料550円)
登録手数料…3,000円 ※釣り銭のないようにお願いします。
予防注射料金1件3,100円として平成27年度(2015)の予防注射頭数468万8,240頭をかけると、145億3,354万4,000円になる。これを巡って獣医師会と無所属獣医師が争っていたのだ。
出所:厚生労働省・犬の登録頭数と予防注射頭数等の年次別推移(昭和35年~平成27年度)
出所:厚生労働省 感染症情報 狂犬病