経済産業省が実施している「商業動態統計」の調査方法について

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再び「商業動態統計でも不正」という報道があったので、基幹統計として重要な経済産業省の「商業動態統計」の調査方法について確認しておく。抜粋部分が多いのでご容赦。

商業動態統計とは、全国の商業を営む事業所及び企業の販売活動などの動向を明らかにすることを目的としている統計である。調査結果は以下のように集計して公開されている。

商業販売

【歴史】
○昭和28年4~6月
指定統計(第64号)として、商業センサスを母集団とする抽出商店により、商業動態統計調査を開始(四半期ごと)。
○昭和31年4~6月
商業センサスを母集団とする、標本理論に基づいた標本調査に改正。
○昭和53年7月
調査結果の早期公表、精度向上をめざし、以下の大幅改善を実施。 •百貨店販売統計調査を商業動態統計調査と統合。
•大型小売店(百貨店、セルフ店、非セルフ店)の商品別(10品目)販売額の公表を開始。
•一般商店の商品別販売額調査を廃止。
•大規模卸売店の商品別販売額を公表。
• 卸売業、小売業商品手持額(四半期ごと)を、大規模卸売店及び大型小売店のみを対象とした調査(商品別、四半期ごと)に変更。
○平成10年10月
「コンビニエンスストア統計調査」を承認統計として調査を開始。
○平成26年1月
「専門量販店販売統計調査」を一般統計として調査を開始。 ○平成27年1月  報告書名を「商業販売統計」から「商業動態統計」に変更。

【調査対象】
<地域>全国
<単位>事業所(コンビニエンスストア、家電大型専門店、ドラッグストア及びホームセンターは企業)
<調査対象数>約18,000事業所又は企業
<回収率>86.7%(平成30年3月分調査)

【抽出方法】
<選定>無作為抽出
標本は、個別標本と地域標本の2種類から構成されている。
(1)個別標本
1. 個別標本は、全ての卸売事業所、自動車小売、機械器具小売、燃料小売、無店舗小売の各事業所及び従業者20人以上の小売事業所(百貨店・スーパー含む)を対象としている。
(2)地域標本
1. 地域標本は、調査区(143調査区)を指定し、その調査区内の従業者19人以下の小売事業所(自動車小売、機械器具小売、燃料小売、無店舗小売の各事業所を除く)を対象としている。
2.調査区の抽出は、平成26年商業統計調査の調査区を母集団とし、層別(4層)に抽出を行っている。

○非標本誤差について
今回報道で問題になっているのはこの部分である。まず経済産業省はこのような非標本誤差への対策を次のように述べている。以下にそのまま抜粋した。
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非標本誤差には、非回答誤差、カバレッジ誤差、データ処理誤差、測定誤差などが存在しており、標本誤差と異なり定量的に評価することが困難。商業動態統計調査では、各種誤差を低減する措置を講じている。

・非回答誤差について
調査では、集計対象となる調査項目については全て回答してもらうことが原則であるものの、回答ミスや回答拒否などにより、調査項目全てが回答されるとは限らない。 このような非回答誤差については、事前の調査票の設計、記入要領による丁寧な説明、また提出後には非回答部分の電話による照会等を行うことで低減を図っている。 なお、照会については、提出元に直接確認を行うことを基本としているが、提出元に確認が取れない場合には、提出された前月値、前年同月値などを用いて推計する場合がある。
・カバレッジ誤差について
商業動態統計調査は、平成26年商業統計調査の対象事業所を母集団としており、平成26年商業統計調査において把握されなかった廃業・休業、新設等の事業所は名簿に反映されていない可能性があるため、本調査の実施時に改めて確認を行うことにより、対象の最新情報の把握に努めている。
・測定誤差について
調査票のデザインや言葉遣いによって調査対象が質問を誤解するなど、事実と異なる回答をしてしまう場合がある。このような測定誤差については、調査票作成段階における記載内容を平易とするなど細心の注意を払うとともに、調査実施関係者に対する研修・指導を徹底することで低減を図っている。
・調査結果の精度(標本誤差の数値)
「平成25年度商業動態統計調査における標本設計及び特定サービス産業動態統計調査の調査方法等に関する調査研究」において、ブートストラップ法を用いた達成精度の評価を実施した(調査研究報告書はこちら)。
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非標本誤差というのは、標本誤差以外の誤差のことである。ややこしくて面倒くさいが、ひとつひとつ説明すると、まず、標本誤差は限られた数のサンプルとして得られた回答が、全数を調査したときのデータとどの位の違い、誤差が出るかを数学的に検証するものである。一方、非標本誤差はこれ以外の誤差で、それは何かというと、例えば調査員がウソを記入したり、回答者が誤解して回答、さらには無回答などがある。面接調査では調査員の力量によって回答にバイアス(偏り)が出たりする。こういう誤差に対して調査機関は様々な対策を考えているのだが、経済産業省は上記のような対応をしている。
今回、報道で不正があったとされているのは、回答者側が調査に協力的でなく、調査票を出さないと調査員の報酬が下がるため、調査員が架空の数字を記入していたということである。
これは国の統計調査だけでなく、民間調査でも避けることができない問題で、マスコミの調査でもこのようなことが絶対ないと断言できるのだろうか。

【調査時期】
<調査周期>毎月
<調査期日>毎月末日現在

【調査方法】
<調査経路>
(1)指定事業所甲、乙及び調査区事業所
経済産業大臣→都道府県知事→統計調査員→事業所(報告者)
 (2)指定事業所丙、指定企業丁1~4
経済産業大臣→事業所又は企業(報告者)
<配布方法>郵送、オンライン(インターネット経由)、統計調査員
<収集方法>郵送、オンライン(インターネット経由)、統計調査員

【民間委託の有無】
<委託先民間機関名>株式会社日経リサーチ(平成30年度調査)
<委託業務内容>
・調査関係用品作成、発送、調査票回収、審査、名簿整備等
・業務報告書作成 等

以上が、今不正で問題になっている「商業動態統計」の調査方法の概略であるが、こうやって問題になったから、調査員のメイキングの実態も顕在化してくるのであって、それは国の統計だけでなく、どの統計でも起きていると思う。もちろん国の基幹統計でこんなことやられてはたまったものではない。しかし、調査というものは、調査員の人間性にかなり依存していることは間違いないので、すぐれた人材をどれだけ投入できるかが調査結果の品質を決めるともいえる。

出典:経済産業省・商業動態統計