最近は林業で稼げるを謳い文句に移住を促進する自治体が現れている。例えば「静岡県は、霊峰富士や南アルプスに代表される豊かな自然環境に恵まれており、(中略) 魅力あふれる静岡県の森林を守り、育て、活かす林業であなたも働いてみませんか?」「秋田県のスギの資源量は日本一であり、その資源は今まさに利用期をむかえています。(中略) 林業が盛んな秋田で林業を体験してみませんか。秋田の壮大な森林が待っています。」などがある。
一方、林野庁は林業成長産業化地域創出モデル事業の「林業成長産業化地域」を選定している。選定された和歌山県田辺市などは、モデル事業関係予算1600万円を提案し、森林を核とした地域の活性化に取り組む事業に対し補助を行うとしている。
では、その林業は稼げる産業なのであろうか。農林水産省の「林業経営統計調査」で林業経営収支累年統計を見てみた。昭和46年(1971)から平成13年(2001)と平成14年(2002)から平成25年(2013)のデータは調査対象が変更されている。時系列に整理してみたが、林業粗収益はピーク時の平成2年(1990)が206万0.4千円である。所得は126万4.6千円。平成25年(2013)には粗収益が248万4千円、所得が11万3千円である。目を疑うような数字である。これで林業で移住ができるのだろうか。副業でしか林業は成り立たないと言われているが、数字が現実を物語っているだろう。