和歌山県が首都圏に梅干しを防災品として売り込むという。なぜ梅干しが防災品なのか疑問に思ったが、すでに東京の荒川区と江東区では災害備蓄品に梅干しを加えている。梅干しの保存性の高さと疲労回復や食中毒予防効果などが評価されたようだ。
私も梅干しは大好きだが、大好きなのにめったに食べることがない。食材の中でも特異な存在になっている。いったい梅干しの状況はどうなっているのだろう。調べてみた。
公的な梅干しの生産データは見当たらないが、梅の生産統計は作物統計の中にあるので、そこから推定していく。梅(生菓)の収穫量は1994年に初めて10万トンを超えて11万2,800トンとなった。その後も若干の増減はあるものの、11万から12万トンで推移している。では梅干しに加工され出荷されているのはどの位だろうか。和歌山県農林水産試験研究機関研究報告の第6号「ウメの需給動向と産地の課題」の中で推定されているので紹介する。
(抜粋)
2000年の数値を見ると、国内産ウメ12.1万tと輸入ウメ8.5万t(生果に換算)が国内に供給されている。これらのうちから家庭用消費向け等に市場出荷3.9万t、加工原料として15.0万tが供給される。加工原料は梅干・エキス等に13.4万t~13.7万t、梅酒用として1.3万t~1.7万tが供給される。梅干・エキス等への供給量を梅干の製造量に換算すると6.7万t~6.9万tが製造されたことになり、最終的には、家庭用(贈答品も含め)に4.1万tが、業務用に2.6万t~2.8万tが消費されたことが推定できる。
2000年時点で原料の梅約13万tが加工されて7万t弱の梅干になっているという。最新の2014年のデータでは梅の収穫量が11万1,400tなので単純に換算すると梅干は6万t程度となる。この数字が大きいのか小さいのか分からないが、各自治体が梅干を防災品として備蓄すると大きな需要が生まれることになる。備蓄品は消費するものもあるだろうが、多くは廃棄されるものと考える。
出所:作物統計調査 作況調査(果樹)長期累年 13 うめ 全国
出所:和歌山県農林水産試験研究機関研究報告 第6号 ウメの需給動向と産地の課題