ふぐ

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トラフグの肝をめぐって佐賀県と全国ふぐ連盟が対立しているというニュースが流れた。猛毒のある肝が食べられるのかどうかで、フグ肝を観光資源にしたい県と危険だとするフグ料理店の団体が対立している。外国から見たら自殺行為に見えるフグ食文化だが、完璧に安全なら食べてみたいと思うだろう。しかし完璧などどこにもない。では日本人が大好きなフグは一体どの位獲られているのだろうか。調べてみた。

農林水産省の海面漁業生産統計調査にフグの漁獲量と養殖フグの収穫量がある。データを時系列にまとめてみた。天然ものは平成26年(2014)には4,828トン、養殖が4,902トンで天然ものを上回っている。このうちトラフグがどの位占めているのか不明だが、養殖はトラフグがほとんどを占めている。

フグ養殖の歴史を見ると、鹿児島県水産技術のあゆみによると、トラフグの養殖は、昭和8年(1933)年より昭和12年(1937)にかけて山口水試瀬戸内海分場で試験をしたのが最初だそうで、当時は蓄養だったそうだ。蓄養とは天然の魚を漁獲して、生簀などで一定期間成長させて出荷する方法のことで、養殖は卵から魚を育てていくやり方のこと言う。しかしすでに戦前からフグの養殖は始まっていたのは少々意外だった。熊本県の「熊本県の養殖の歴史」によると、熊本でも、昭和37年(1962)の熊本県水産試験場事業報告書に「昭和36年に深海湾にフグ養殖場が開設され」とあり、熊本県のトラフグ養殖は昭和36年(1961)に牛深市深海町(現:天草市深海町)の網仕切蓄養が始まった。そして、昭和56年(1981)頃から人工種苗を用いた養殖が熊本で始まったという。

この昭和50年代後半からトラフグ養殖が日本全国で本格化することになる。養殖トラフグの収穫量は急速に増加する。全盛期と比較すると減少しているものの近年は年間5,000トンに迫る収穫量で推移している。日本独特の食文化は観光資源になると考えるのは間違っていないだろうが、腹を壊す程度ではないところに問題はある。

ふぐ海面漁業魚種別漁獲量累年統計

ふぐ養殖魚種別収獲量累年統計

出所:農林水産省・海面漁業生産統計調査