統計調査の不正問題を機に基幹統計の調査方法を確認しているが、今回は総務省統計局が実施している「家計調査」を見てみる。この調査は日本の世帯を対象に行っている調査である。日本には5000万以上の世帯がある。これを全数調査するわけにはいかないから、サンプルを抽出して調査する。ここに誤差や手抜き、不正が入り込む余地が生まれる。もしかしたら不正ではないが恣意的な操作が入っているのではと疑問を持つ人もいるのではないだろうか。
この統計調査は、国民生活の家計収支の実態を把握することを目的にしている。調査結果は以下のように集計して公表されている。
【歴史】
昭和21年(1946年)
「消費者価格調査」が始まる。「消費者価格調査」は都市に居住する単身世帯を除く非農林漁家世帯を対象として,日々の買物について,その価格,購入数量,支出金額を調査したもので,収入に関しては,この調査からは得られなかった。
昭和28年(1953年)
名称を「家計調査」と改めた。昭和25年9月に家計の収支両面が把握できるように改正し,名称も26年11月から「消費実態調査」と改め、28年4月から「家計調査」と改めた。
平成11年(1999年)
農林漁家世帯を調査の対象に取り込み,12年1月から,それまでの「農林漁家世帯を除く」集計に加え,「農林漁家世帯を含む」集計も開始した。
平成14年(2002年)
調査対象を単身世帯を含む約9,000世帯に拡大した。
【調査対象】
全国の世帯
※ただし,下記に掲げる世帯等は世帯としての収入と支出を正確に計ることが難しいことなどの理由から,調査を行っていない。
(1) 学生の単身世帯
(2) 病院・療養所の入院者,矯正施設の入所者等の世帯
(3) 料理飲食店,旅館又は下宿屋(寄宿舎を含む。)を営む併用住宅の世帯
(4) 賄い付きの同居人がいる世帯
(5) 住み込みの営業上の使用人が4人以上いる世帯
(6) 世帯主が長期間(3か月以上)不在の世帯
(7) 外国人世帯
【抽出方法】
標本調査で,層化3段抽出法(第1段―市町村,第2段―単位区,第3段―世帯)により世帯を選定している。
複雑で難しい感じがするが、そうでもない。下の表のように調査対象を分けている。
まず全国の都道府県庁所在地がある市と政令指定都市が対象になる。県庁所在地のある市は47。この中に政令指定都市も含まれる。県庁所在地ではない政令指定都市が5あるので、合わせると52になる。
次に人口5万人以上の市は、以下の(1)から(4)を考慮して74に分ける。
(1) 人口集中地区人口比率
(2) 人口増減率
(3) 産業的特色
(4) 世帯主の年齢構成
最後に人口5万人未満の市町村は、海沿いにある、山地にある、世帯主の年齢などで42に分ける。
合計すると、52+74+42=168である。この168の区から1市町村ずつ抽出して、調査世帯を割り当てている。
なお調査世帯は偏らないように順次、新たに選定された世帯と交替する仕組みになっている。
【調査時期】
調査は毎月実施。
【調査方法】
調査は以下の流れで行われている。
調査員が調査対象を訪問して、調査票の配布から回収までを行っている。もし回収が上手くいかなかったら、調査員はどういう気持ちになるだろうかと心配する。これほどまで大規模で人手に頼った調査は、規模が大きいだけに難しい調査になる。これを毎月実施しているのだから、手を抜けばデータの連続性にゆがみがでるだろう。
調査内容つまり質問項目は世帯の収入から支出、さらに食費だったら米、パン、肉、魚など、個別にどの位支出したのかを聞いている。いったいどこまで正確に回答してもらえるのだろうか疑問もあるが、国が実施するからできる調査である。そういう意味では貴重な統計データである。