各地で梅まつりが開催されている。すでに終わった地域もあるが、これから満開を迎える名所も残っている。弊社の所在する東京でも梅の名所はたくさんあって、梅見客で賑わっている。これほど梅の名所があるのなら、梅の果実も各地でたくさん収穫されているのだろうと思う。
農林水産省の「平成27年産特産果樹生産動態等調査」にうめの都道府県別生産状況データがある。ここでうめの生産データが記載されているのは、群馬、神奈川、長野、富山、石川、福井、奈良、和歌山、徳島の9地域のみである。そして周知の通り、圧倒的な生産量を誇るのは和歌山県である。生産地域が極端に偏っている。
なぜ和歌山が梅の生産が多いのか。和歌山県の「14年度版きのくに産業白書」に経緯が紹介されているので抜粋する。
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梅 干
平成3年度の全国出荷量43,400t、うち和歌山県30,100t(全国比69.4%)という数字が示すように、名実ともに日本一の梅の歴史は藩制の昔にさかのぼる。当時の田辺藩は重税に次ぐ重税で農村の苦しみは言葉の外であった。耕地面積による年貢を少なくみせる税軽減策として、性が強く竹薮の岸でも育つ梅を植え、竹や梅しか育たない痩地であることで免租地とする法をとった。
当時の梅は「やぶ梅」と名づけられ品質は全く問題にならなかったが、その後、徴兵令施行による軍隊食への導入、疾病流行による需要増もあって品質改良も進んだ。
農村の副業として作付面積も増え、特に日清・日露の両戦で陸海軍の称賛を得たことが拍車をかけ今日の産地の礎を確固たるものとした。
また近年は、健康食品として底堅い人気を保つ傍ら、梅を素材として活かし商品付加価値の向上を図る食品業界や医療分野との関係強化が進められている。
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重税に苦しんだ末の苦肉の策が、現在の圧倒的な地位を築いたということだ。
出典:平成27年産特産果樹生産動態等調査 うめ用途別仕向実績調査5都道府県別の生産状況
出典:14年度版きのくに産業白書2地場産業の沿革