規制緩和で通訳案内士法が改正され、資格がなくても有料で外国人の観光案内ができるようになった。訪日外国人の急増に伴う通訳ガイドの量の確保を目的とした措置だ。
改正によって通訳案内士は業務独占から名称独占へと規制が見直された。これで誰でも有料でガイドができるようになったが、もちろん無資格者は「通訳案内士」を名乗ることはできない。
では通訳案内士はどの位いるのだろうか。需要はどうなっているのだろうか。国土交通省観光庁が「通訳案内士制度について(平成28年1月28日)」を公表している。それによると、通訳案内士登録者数は右肩上がりで毎年増えている。とは言え、平成27年(2015)で19,033人。訪日外国人が2000万人突破した時代に、約2万人の通訳案内士がいる。訪日外国人1,000人に1人の通訳案内士。これが多いのか少ないのか、これだけでは判断できないので、国土交通省観光庁の「通訳案内士の就業実態等について(平成26年12月)」を見てみる。
これによると通訳案内士の「就業者の就業日数」は年間30日以下が半数以上を占めている。201日以上はたったの0.6%でしかない。「通訳案内業に関わる年収」は、200万円以下が約半数。300~399万円が4.7%、400万円以上が4.0%でしかない。通訳案内士の資格を取って、専業でやっていくのは難しいということだ。
現状でも有資格者が専業で食べていくのは難しい状況なのだから、規制緩和によって従来通りのビジネスはすぐに行き詰まりそうに見える。しかし、資格を持たない有料ガイドが新しいビジネスを生み出していくかもしれない。
出所:内閣府 規制改革会議(平成25年1月~平成28年7月)第57回 平成28年1月28日 議事次第 資料1-2 観光庁提出資料
出所:国土交通省観光庁 通訳案内士の就業実態等について 平成26年12月