日本とEUのEPAで、欧州産のチーズに対し低関税の輸入枠を新設すると報道があった。日本はチーズに29.8%の関税をかけているが、これに一定量の輸入枠を決めて、その枠内で関税を引き下げる形になり、発効後は輸入枠分の数万トンが低関税で流入する。これによってチーズ向け生乳の国内生産量99%を占める北海道の酪農家への悪影響が出るとされている。
では、国内ではどのくらいのチーズが生産されているのだろうか。農林水産省の「チーズの需給表」というものがある。そこからチーズの生産量を抜粋してみた。
平成2年(1990年)の国産ナチュラルチーズ生産量は、2万8,415トン。20年後の平成22年(2010年)の4万6,241トンまで増加を続けたが、その後ほぼ横ばいで推移するようになった。国内の需要がなくなったのではなく、輸入が増えており、平成2年(1990年)の輸入ナチュラルチーズ総量11万1,629トンから平成22年(2010年)24万8,054トンへと一貫して増加してきている。輸入チーズにかなり押されている格好である。
チーズは、加工原料乳生産者補給金制度によって守られている。価格の低い加工原料乳の生産者に補給金を交付して生乳需給の安定を図っている。平成28年(2016年)の補給金単価は15.28円/㎏である。