高知県大川村が村議選で立候補者が定数に足りない事態となったときに備えて、議会を置かずに有権者が予算案などを直接審議する「町村総会」を設置することについて検討を始めたと報道された。ついにこういう時代がやってきたのかと、これからが心配になる。
この大川村、人口は男性199人、女性207人、計406人。世帯数は228世帯(2016年10月31日現在、大川村公式ウェブサイト)である。たった406人の人口で村議選の定数は6人。議員の人件費も大きな負担になるだろう。報酬は削減せざるを得ない。とすると立候補する人がいなくなる。
そもそも地方議会はちゃんと機能してきたのだろうか。どのような人たちが議員になってきたのだろうか。総務省が地方選挙結果を公表している。平成27年(2015年)執行の「第18回地方選挙結果」の中に、年次別競争率がまとめられている。
それによると市議の競争率は戦後まもない昭和22年(1947年)は3倍、昭和26年(1951年)は2倍、昭和38年(1963年)にはついに1倍にまで落ちてしまう。昭和62年(1987年)まで1倍が続く。その後少し上向いて1.2倍のまま現在まで経過している。
町村議のデータはさらに低く、昭和22年(1947年)から競争率1倍である。その後もずっと1倍で、昭和42年(1967年)に1.3倍に上がるが、その後も昭和62年(1987年)まで1倍に戻っている。平成3年(1991年)からは少し上昇して1.1倍になる。そして現在まで1.1倍のままである。
競争率1倍ということは、手を上げれば誰でも議員になれるということである。こんな状態になっていたとはデータを見てみなくては分からなかった。仕事が無いから議員にでもなるかという輩がいてもおかしくないだろう。
では、どんな人たちが議員に当選しているかというと、職業別当選人というデータがこの報告書の中にある。市議については会社員が最も多く、町村議では農林業が最も多い。どちらも当選したら今までの仕事はできないだろうから、どういう立場の人なのか、想像はできるが、これだけで明確にはできないだろう。
地方議会は形式的には必要だったのかもしれないが、実質的にはなくても大勢に影響はなかったのではないかと思わせるデータである。